2026-03-14
1. 中東:米・イスラエルによるイラン攻撃(最大の焦点)
米国とイスラエルによるイラン攻撃が開始から2週間を迎え、経済的影響が拡大しており、収束の兆しは見えていない。
2月28日に開始された軍事作戦で、イランの最高指導者アリー・ハメネイ師が殺害され、息子のモジュタバ・ハメネイ師が新たな最高指導者に任命された。イランは報復として中東各地にミサイルやドローンを発射し、世界の石油供給量の約5分の1が通過するホルムズ海峡を事実上封鎖している。
イラン保健省の最新発表では、戦争開始以降、イラン国内で少なくとも1,444人が死亡、18,551人以上が負傷。紛争は周辺地域にも拡大しており、イランはUAE、サウジアラビア、カタール、クウェートなどの湾岸諸国にドローン攻撃を実施し、イスラエルはレバノンへの地上攻撃も開始した。
2. 世界経済・エネルギー危機
イラン戦争の影響で深刻なエネルギー危機が発生。
ブレント原油は3月9日時点で1バレルあたり94ドルに達し、年初から約50%上昇して2023年9月以来の高値を記録。3月12日には98.76ドルまで上昇し、前年同時期より27ドル以上高い。
IEA(国際エネルギー機関)の3月報告によると、世界の石油供給は3月に日量800万バレル急減する見通しで、2026年の世界石油需要の伸びは21万バレル下方修正された。米国政府は戦略石油備蓄の放出を決定し、ロシア産石油のインド向け輸出に対する制裁を一時的に緩和する措置をとった。32カ国が合計4億バレルの協調放出を発表。
アジアの株式市場は大幅に下落し、日経平均は5%以上下落、韓国のKOSPIも6%下落。IMFの試算では、原油価格の持続的な10%上昇がインフレを0.4%押し上げ、世界経済成長を0.15%抑制するとされている。
3. ロシア・ウクライナ戦争
ロシアのウクライナ全面侵攻から4年が経過し、戦闘は続いている。
2025年にロシアはウクライナ領土の1%未満を獲得する一方で、41万6,000人以上の死傷者を出した。過去1年間でロシアが占領した面積は約1,993平方マイル(ウクライナ全土の約0.9%)で、推定されるロシア軍の累計死傷者数は約100万人、ウクライナ側は25〜30万人。
直近4週間(2月10日〜3月10日)ではロシア軍はむしろ57平方マイルを失っており、ウクライナ軍が領土を回復する傾向が見られる。ウクライナはイラン製ドローンへの豊富な対処経験を活かし、中東の米国・同盟国基地にドローン対策チームを派遣している。一方で、ロシアはイランとの関係を深めており、昨年20年間の包括的戦略パートナーシップ条約を締結した。
4. AI・テクノロジー
AI分野では2026年も急速な進展が続いている。
基盤モデルの改善速度が鈍化する中、次のフロンティアは「エージェンティックAI」であり、自律的に判断し複数ステップのタスクを実行できるシステムの構築が焦点。AI規制をめぐっては、トランプ大統領が州のAI法を無力化する大統領令に署名し、連邦と州の間で規制権限をめぐる政治的対立が激化している。
MicrosoftのPeter Lee氏によれば、2026年にはAIが論文の要約にとどまらず、物理学・化学・生物学の発見プロセスに積極的に参加するようになる。IBMの研究者は「2026年はフロンティアモデルと効率的モデルの対決の年になる」と予測し、巨大モデルと並んで省資源のハードウェア対応モデルが登場するとしている。
MIT Sloan Management Reviewは、AIバブルの縮小、エージェンティックAIの進展、そしてAIの組織的活用への移行を2026年の主要トレンドとして挙げている。
5. 気候変動・環境
Washington Postの分析によると、過去30年間で記録上最も速い温暖化速度が観測されている。2025年は地表温度で史上2番目に暑い年となり、世界の炭素排出量は約1%増加した。
米国がIPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIPBESから離脱したことは、国際的な科学協力にとって大きな後退とされている。一方、COP30(ブラジル・ベレン)では米国がボイコットしたものの、194カ国から56,000人以上の代表が参加し、先進国は途上国への適応資金を少なくとも3倍にすることで合意した。
クリーンエネルギーの導入は米国を含め世界的に拡大を続けており、2025年には米国の新規発電設備の90%以上が再生可能エネルギーだった。ただし、1.5℃のオーバーシュートは既に不可避とされており、化石燃料の段階的廃止に関する交渉は難航している。
6. その他の注目すべき動向
アフガニスタンとパキスタンの国境では武力衝突が発生し、タリバンは28人の兵士の死亡を確認、国連は民間人42人以上の死亡を報告。コンゴ民主共和国では、米国がルワンダ軍に対しM23運動支援を理由に制裁を課した。フランスのマクロン大統領は、世界的な脅威の高まりを理由に、数十年ぶりとなる核兵器備蓄の増強を発表した。
7. 米国内政・通商政策
2025年1月から4月にかけて、米国の平均実効関税率は2.5%から推定27%へと急騰し、1世紀以上で最高水準に達した。しかし、2026年2月20日、連邦最高裁は「Learning Resources, Inc. v. Trump」事件で、トランプ大統領がIEEPA(国際緊急経済権限法)を関税賦課に使用する権限がないとの判決を下した。
これを受けて、トランプ大統領は1974年通商法第122条に基づき、150日間の暫定措置として全輸入品に10%の関税を課した。さらに、トランプ政権は中国、メキシコ、EU、その他十数カ国を対象に通商法第301条に基づく新たな貿易調査を開始し、最高裁に違法と判断された相互関税の代替措置を模索している。
Tax Foundationの分析では、これらの関税は2026年に米国の1世帯あたり平均1,500ドルの増税に相当するとされている。
8. 宇宙開発
NASAのアルテミスII計画は、1972年のアポロ17号以来初となる有人深宇宙ミッション。宇宙飛行士4名が搭乗し、月周回軌道を飛行する10日間のミッションとなる。2026年4月1日の打ち上げを目標としているが、液体水素漏れやヘリウム流量の問題により、これまで2度延期されている。
NASAはアルテミスプログラムを加速させる方針も発表しており、2027年にアルテミスIII(地球軌道テスト)、2028年にアルテミスIVで月面着陸を目指す。
9. グローバルヘルス・感染症
WHOは、COVID-19パンデミックから6年が経過し、世界の備えが進歩した面とそうでない面があると評価。エボラやマールブルグなどの最近のアウトブレイクは以前よりはるかに短期間で封じ込められるようになった一方、資金が健康分野から防衛・安全保障分野へとシフトしており、パンデミック対策のシステムが危険にさらされていると警告。
2026年の主要な健康上の脅威は、高病原性鳥インフルエンザH5N1、エムポックス(サル痘)、オロポウチウイルス。世界のワクチン接種率は停滞もしくは後退しており、2024年には1,430万人の子どもがワクチンを受けられなかった。
10. アフリカ情勢
IMFの見通しでは、2026年のアフリカの経済成長率はアジアを初めて上回る見込み(4.3%)。一方で、コンゴ民主共和国東部ではルワンダが支援するM23運動との紛争が続いており、スーダン内戦は世界最悪の人道危機の一つとなっている。中東のイラン戦争はアフリカ経済にも波及しており、エネルギー価格の高騰が深刻な影響を与えている。
11. ラテンアメリカ
2025年のラテンアメリカのM&A市場は取引件数15%増、取引額35%増だったが、2026年は地政学的不確実性が活動に影を落とすと予想。米中戦略的競争はラテンアメリカでも激化しており、パナマ運河の港湾運営をめぐる問題や、複数国の選挙で対中関係が争点化している。
12. 米中関係とインド太平洋
2026年の世界外交は、米中間の「管理された共存」へと向かう実利的なシフトによって形作られている。米国は技術産業に不可欠なレアアースで中国に依存し、中国は米国の消費市場に依存。この相互依存が、アフリカ、中東、ラテンアメリカなどの国々に対して両大国の間でバランスをとる余地を与えている。
中国が「エレクトロステート(電気国家)」として電気自動車、バッテリー、AIなどの分野を支配しつつある一方、米国が世界最大の「ペトロステート」に留まっているという構造的乖離が指摘されている。
13. 水資源・食料安全保障
水資源は世界で最も争われている共有資源の一つとなりつつある。インダス水条約が停止状態に、エチオピアのナイル川ダムが下流国との拘束力ある合意なく稼働中、中国が下流国との条約なしに世界最大のダムを建設中。南アジアでは核武装国同士が河川を政治的レバレッジとして利用している。